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いつ明けるともしれない夜また夜を

布施砂丘彦

2022.5.13-14

 けっきょく、音楽には戦争を止めることなんてできない。疫病を治すこともできない。腹を膨らせることも寒さを凌がせることもできない。音楽には、わたしたちを癒してわたしたちが見たくない現実を忘れさせること以外に、なにかできることはあるのだろうか。
 わたしは知っている。ベートーヴェンやショスタコーヴィッチの交響曲を演奏したとき、わたしは興奮した。頭に血がのぼった。激しい音楽は、それが優れていれば優れているほど、演奏しているわたしのなかにある攻撃性や排他性をあらわにする。わたし自身のなかにも暴力をふるったり他人を差別するような可能性はあるのだと、わたしは演奏を通して知った。
 わたしは知っている。バッハの受難曲を演奏したとき、わたしは傷付いた。静かな痛みを伴う音楽は、わたしが見たくない、わたしのなかにある汚い部分をわたしに見させるのだ。わたしがいかに愚かで惨めな人間であるのか、わたしは演奏を通して知った。
 わたしはニュースを見た。ひとがひとを差別していた。そのひとたちは疫病や戦争の当事者だったり、あるいは当事者でなかったりした。そのひとは傷付いた、痛めつけられた、あるいは死んだ。こんなかなしいことが、なんで、なんで起きなくちゃいけないんだ。
 音楽は戦争を止められなくても、病気を治せなくても、せめて、わたしやあなたが誰かを傷付けないようにすることくらいできるのではないか。わたしたちは誰でも簡単に加害者になりうる。音楽はそれをわたしたちに教えてくれるのではないか。
 わたしは、音楽が持つ、そんなちっぽけな可能性を信じたい。(布施砂丘彦)

 


 

W.A.モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』第1幕よりバンダ音楽「再び音楽を始めよ」
A.ヴィヴァルディ:『和声と創意の試み』よりヴァイオリン協奏曲へ短調「冬」RV297より第1楽章D.ショスタコーヴィッチ(R.バルシャイ編):室内交響曲Op.110a(原曲:弦楽四重奏曲第8番)
J.S.バッハ:『マタイ受難曲』より第10曲「わたしです、わたしこそ償うべき者です」
リゲティ・ジョルジュ:100台のメトロノームのためのポエム・サンフォニック
カルロ・ジェズアルド:『マドリガーレ集第6巻』より「ああ 苦しみの中で息絶えよう」
ブライアン・ファーニホウ:『弦楽四重奏のためのソナタ』より第1楽章「アルファ」第4楽章「デルタ」第11楽章「ラムダ」第15楽章「オミクロン」
ラ・モンテ・ヤング:『コンポジション1960』より第13番
オスカル・リンドベルイ:弦楽のためのアダージョ

 

ヴァイオリン:大光嘉理人(コンサートマスター)、福田麻子、吉澤知花、城野聖良、菊川穂乃佳、吉田薫子
ヴィオラ:栗林衣李、眞岩紘子
チェロ:坂井武尊、原宗史、松谷壮一郎
コントラバス:布施砂丘彦

俳優:ヒビノアヤコ

舞台監督:小田原築
照明:植田真

一般 3000円 / 学生 2000円

主催:布施砂丘彦
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 【スタートアップ助成】/東京芸術大学音楽学部若手作曲家・演奏家・研究者支援事業

 

2022年5月13日(金)19:00-
2022年5月14日(土)14:00-

 

受付開始・開場 30分前

 

上演時間 80~120分

 

チケット

一般 3000円 / 学生 2000円

 

チケット予約URL

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