Exhibition

一人の女性、一つの命

大橋藍

2024.4.23-5.7

 このたび、大橋藍個展「一人の女性、一つの命」展を開催いたします。
大橋藍(b.1993、神奈川県出身)は家族など共同体に存在する暴力をあばくことをテーマとして制作、発表している新進アーティストです。
昨年1 月、BUoY にて行われた個展「パパ」では当事者である大橋が実際に幼少期に経験した実父による家庭内暴力についての独白が含まれる映像作品《パパ》2023 年をはじめとする衝撃的な作品群を発表しました。

 

 本展では飲酒運転によって命を落とした大橋の大学時代の友人、アーティストの濱口望の絵画作品を大橋がキュレーションします。また、濱口の残された家族に取材し、当事者の苦しみをテーマとした映像作品群を合わせて発表します。

 

 映像作品のうちの一つ、《この激しい痛みを知れ》2024 年では、大橋が飲酒運転事故の容疑者になりかわり、濱口望の母親を撮影しながら対話します。濱口の母親が号泣しながら容疑者に扮する大橋を責める様子は、撮影者である大橋が画面に写っていないことから、その存在を越えてダイレクトに鑑賞者に迫り、まるで鑑賞者自身が容疑者自身であるかのような錯覚を覚えさせます。音声のない映像ですが、それがかえって母親の激怒する一つ一つの細やかな表情に没入させるものになっています。

 

 また、もう一つの映像作品《Good Manners Drinking》2024 年でも、大橋は容疑者になりかわり、濱口望の父親と対話します。父親の社会倫理の枠組みを超えた容疑者に対する怒りがありのままに映し出されます。映像の途中より、容疑者から「大橋自身」に戻り、濱口の父親とこの社会における飲酒運転の実態について話を深めていきますが、その対話は当事者性の生きづらさの本質に迫る、示唆に富んだ内容となっております。

 

 濱口望の作品群がもつ特有の明るさ、快活さは、彼女に襲いかかる運命を跳ね飛ばすかのような輝きをもって鑑賞者に語りかけます。本展を通して彼女の命について考えるということは、一人の女性の人生、ひいては一つのフェミニズムの在り方について考えることです。来場者に、生きることの重みについて改めて問い直します。

 


 

大橋藍

1993 年神奈川生まれ。

既製品などのオブジェクトやパフォーマンス映像を中心に、暴力や差別の問題について、ことの本質を浮かび上がらせ鑑賞者の前に突きつけるような作品を制作している。当事者としての生きづらさを主題にしており、実際に経験した父親による家庭内暴力や勤務先で起きた日本人による中国人差別の問題などにこれまで取り組んできた。

また、個々の主要な関心よりさらに根源的なテーマとして、作家という表現活動に関わる者としては決して避けることのできない表現の自由について考察する作品も作っており、大学の卒業展示(国立新美術館)で上記の中国人差別についての作品が検閲に遭い、参加した「あいちトリエンナーレ 2019 情の時代」 では当該作品で「表現の不自由展・その後」に参加した。

主な展覧会に「あいちトリエンナーレ2019 情の時代」、「パパ」(BUoY)、「TOKYO INDEPENDENT 2019」(東京藝術大学陳列館)などがある。

 

 

14時から18時(会期中無休)

入場料500円

 

 

【トークイベント】

会場:BUoY(東京都足立区千住仲町49-11)

大橋藍× 小泉明郎

4 月25 日(木)14 時~15 時30 分

大橋藍× 濱口雅子× 山本美也子

4 月28 日(日)15 時~16 時30 分

大橋藍× 飯山由貴

5 月3 日(金)17 時~18 時30 分

 

 


 

小泉明郎

アーティスト。1976 年生まれ。これまで多数の国内外の国際展や美術館で人間の身体と感情の関係、そして共同体と個人の関係性についての現実と虚構を織り交ぜた大規模映像インスタレーションを発表。イラク戦争で家族を奪われたイラク人やイラクへ派兵された元アメリカ兵など、戦争で傷ついた人たちへのトラウマケアをテーマにした作品を多数発表。

 

飯山由貴

アーティスト。1988 年生まれ。過去の記録物や人への取材を手がかりに、社会と個人の影響関係に関心を持ちながら映像やインスタレーションを制作している。主な展覧会に『あなたの本当の家を探しにいく』(東京都人権プラザ)。2022 年の『地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング』(森美術館)での家庭内暴力について取材した映像作品が記憶に新しい。

 

山本美也子

NPO 法人はぁとスペース理事長。障がい者も健常者も一緒に楽しく生活できる思いやりスペース作りをめざし、2010年3月「NPO法人 はぁとスペース」を設立。車いす優先駐車場のマナー啓発運動や、障がい者スポーツの支援などを行う。

設立して約1年後の2011年2月、当時16歳の長男を飲酒運転事故により奪われる。その直後より「飲酒運転撲滅活動」を始め、命の大切さや、加害者も被害者も作らない事を訴え、講演活動を行う。

 

濱口雅子

2015 年8 月23 日、本展覧会のテーマとなる神奈川県葉山市での飲酒運転による暴走ひき逃げ事件で長女(当時23歳を失う。2018 年3 月「 素敵な飲み方してますか? Good Manners Drinking」 と呼びかけるGMD プロジェクトを発足。 娘の絵を使ったポスターを制作した事で話題を呼んだ。 GMD プロジェクトによる全国での講演会が多数ある。

 

HP

aiohashi.com

 

問い合わせ

aiohashi71@gmail.com

 


プレスリリース